認知カウンセリングとは
*1990年代に市川伸一先生(東京大学名誉教授)が提唱した。
* 学習や理解に困り感を抱える人を個別の相談・支援を通して助けていく取り組み。
*対話を通して、課題を引き出し、カウンセラーと一緒に解決していくもの。
*効果
①自己学習力が身につく
②理解する方法を理解できる
③学習意欲を維持・向上させられる
学習指導に用いる基本的な6つの技法
①自己診断
〇どこがわかっていないのか、なぜわからないのかを言わせてみる。
(実際には言えないことが多いが、行ってみようとすることが大切)
〇「何となくわからない」、「全体的にわからない」というのでは、自分も他人も手が打ちに
くいことを知ってもらう。
〇問題点をはっきりさせるというメタ認知を促す。
②仮想的教示
〇ある概念や方法を、「それを知らない人に教示するつもりで」説明させる。
〇説明できない時には、「本当はよくわかっていない」ことに自分で気づくように。
〇概念の説明とは、一般的な定義と、事例を掲げることで成立することを理解してもらう
(教科書等を参考に)。
〇「何となくわかった」という状態を、自分で明確なものにしていく。
〇自己診断と、表現力を促す。
③診断的質問
〇どこまでわかっているかを試すための質問をしてみる。
〇「この質問にこう答える人は、このような誤解をしている」 というような、
「解答→誤概念の同定」のレパートリーを増やすとよい。
④比喩的説明
〇概念の本質を比喩(アナロジー)で説明する。
〇比喩を用いたがゆえに生じる誤解については、十分注意が必要。
〇うまい比喩と、比喩から生じる誤解についてのレパートリーを増やす。
⑤図式的説明
〇概念間の関係を整理して図式化する。
〇理解は、図そのものの中にあるのではなく、その解釈(図を どう見るかがわかっている
こと)にあることに注意。
〇図を用いて説明したら、同様の説明が学習者にもできるかど うかを確認するとよい。
⑥教訓帰納
〇解いた後に「なぜ、はじめは解けなかったのか」を問う。
〇問題側の難しさ、やり方の工夫、自分の思い違い・ミスなど。
〇一般化したルールの形で、教訓を抽出しておく。
〇問題は、やりっぱなしにしない。
〇1題解くごとに、「自分はどういう点で賢くなったのか」を明らかにする。
(教訓は、できるだけ学習者自らがノートに書くほうが良い。)
〇学習者が気付かないようなことは、補うようにする(やはりノートに)。
〇正答できたか否かよりも、「教訓を引き出せたかどうか」が学習の成果であ ると考えら
れるように。
認知カウンセリングの心得
(1)クライエントの自立を促すことを目標とすること。
そのためには、 わかることの楽しさを知り、学習の進め方を模索する態度をクライ エント
にもってもらうこと。
(2)個人指導の力量を向上させることと同時に、基礎研究とのつながり を見出す努力をカウン
セラー側がつねにもつこと。
(3)「わからない」、「やる気の出ない」クライエントに対して、感情 的にならず、一緒にそ
の原因を探って解決しようという姿勢を持つ こと。
(4)学習者が一般的に陥りやすいつまずきや、学習観・学習方法などを あらかじめある程度把
握しておき、診断と指導のための基本的な技 法を知っておくこと。