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AIと学習と人が学ぶ理由

Wikipediaによると、AI(Artificial Intelligence、人工知能)とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試みで、そのための一連の基礎技術を指します。具体的には、自然言語の理解、経験を通して学習し応用させる技術などです。最近は、AIが人間を超える日についてもよく取り沙汰されます。先日、シンギュラリティの実相について考える機会ありました。


【靴屋さんでの出来事】

 移動の途中、関西空港近くのアウトレットモールに時々寄ります。目的は、お買い得品と商品情報集めで、キャンプ道具、山行きの服、靴と、立ち寄る店は限られています。

その靴屋さんに立ち寄ったのは、昨年5月にコロナ第一波が落ち着き?活動が再開された時に夏用の1足を買ってから8カ月ぶりのことでした。コロナ第3波の最中なので、ニット帽を深くかぶりマスクをして完全防備でぶらっと店に入ったのです。


 セールコーナーを確認して、店内を一周して、買う気のない新商品を眺めるまで入店から3分ほど経過しています。そのタイミングで「良かったらお試しくださいね」と声が掛かり、スッと距離を縮める店員さんが現れます。ふだんは磁石のS極同士がそうなるように、反射的に後ずさりしてしまう私なのですが、今回は「ひょっとして…」と、聞き耳を立て、次の言葉を待ちました。


 新商品の説明を簡単にされたのですが、内容は頭に入ってきません。「それだけ?違うかなぁ…」と、他の言葉を期待する自分が少し可笑しく思えました。おそるおそる店員さんの方を見ると、やはり大きなマスクをしているので、8カ月前の記憶を辿ることもできずに「やっぱり違うかなぁ」「こんなマスクとニット帽ではね」と自分を納得させていました。


 8カ月前の出来事とは、こんな始まりでした。

その時は目当ての靴があり、入店してセールコーナーを確認し、1分後にはその棚の前に立っていました。「ホントに買うのか?」自問自答する時間です。私は割引率と限定品に弱いので、モノを買う時の「欲」と闘う方法として、よく調べて、一呼吸おいて、どうしても必要だと自分で納得してから買うことにしています。そのためホントに買うのか?と自問自答するのは最終段階なのですが、その時も、今回同様に店員さんから声が掛かりました。その店員さんは言いにくそうに「あのぉ…前にご来店いただきました?」と聞いてくるので、私は驚き、その店員さんを凝視してしまいました。


 この話は、それから更に5カ月前に遡るからです。その頃はまだ感染症が何かもわからずに、このモールも人で溢れていました。私は、1月のセール品を確認するために立ち寄っただけでしたが1足のシューズに目が留まりました。「変わった素材だなぁ」と手に取り、触っていると、店員さんが「それ昆布ナイロンっていう素材なんです。少し変わった風合いでしょ」と教えてくれました。「たしかに昆布みたいやなぁ」と笑いながら、商品の特徴や評判などの話をきいて店を出ました。大勢のお客がいる中での5分ほどの時間です。


「前に、ご来店いただきましたか?」という店員さんの問いに驚いたのはこれが理由です。凝視している私にとどめを刺すように「昆布ナイロンの…」と畳みかけて来る定員さんに、たまらず「ちょっと待って、なんで覚えてるの?」と聞き返しました。大勢のお客を接客する中で、たったの5分、しかもそんなに高くもない商品の話を聴くだけで、買わずに帰った客のことを覚えてるとは…AIの検索履歴じゃあるまいし、と思ったのです。

これに感動した私は自問自答の時間を即やめて「買います」ときっぱり決断したのです。


 さてもとに戻すと、この話はそれから8カ月たっています。マスクとニット帽に覆われた私と大きなマスクをした店員さん(店員さんは複数人おられるので、この時点で誰かは存じ上げません)とは、再会できるのでしょうか…それが、私の興味関心でした。


 またしても「あのぉ、昆布ナイロンの…」と、今度は恐る恐るより少し確信を帯びた明るさで、確認をしていただけました。「そう昆布ナイロンは、夏用に活躍してくれましたよ」と返事をしながら私も嬉しさがほとばしっていたと思われます。この日は、特に何も買いませんでしたが、お客が激減して寂しい話だとか、この店員さんの仕事への向き合い方だとかを聴きながら、それだけで10分くらい話して、すっかり馴染みのお客になったつもりで店を出ました。


【この話の解説】

「なんで覚えているの?」という私の問いに対する、店員さんの答えが秀逸でした。

この方は、入社して売り場にたってから日記をつけているそうです。その日の出逢った人を記録する日記です。簡単な顔イラストと話した内容を記録しておくそうです。私の場合は、メガネと目のイラストと昆布ナイロンの話だとか…それでも、半年前に5分立ち寄り買わずに帰っただけの客を記憶し、再生できるということへの私の驚きは変わりません。この方の能力の高さと人間の高度な認知機能への感嘆、学習方法の大切さを思うばかりです。容貌の特徴と会話の内容をセットするというのは、まさに意味理解を伴う学習と言えるからです。


これがAIの履歴検索機能なら、どうなるのでしょうか?

きっと感動はなかったように思います。

人が学ぶ理由や学習を工夫する理由は、そんなところにあるのかもしれません。

「学ぶことは感動に出会うこと」ではないかと思えます。

シンギュラリティとは、その感動を創造することが出来るのか興味のあるところです。

 

店員のMさんに、この話を公開してもいいかと尋ねると、

「関西空港をご利用の際は、お立ち寄りいただき、ぜひご購入を」と笑顔で快諾。

この逞しさAIには、まだまだではなかろうかと。


ではまた。

(もっちゃん / 三宅基之 )



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